アルツハイマー病病理に中心的な役割を果たすβアミロイドは、前駆体タンパク質からβ・γの2段階切断により産生されます。β切断を担うBACE1の阻害薬が治療薬として期待されましたが、予期せぬ有害作用で治験が中止されています。その原因とされるBACE1の基質について研究し新たな治療標的の発見を目指しています。
1型リアノジン受容体(RyR1)は骨格筋筋小胞体のCa2+遊離チャネルで、その機能異常はさまざまな筋疾患の原因となります。私たちはRyR1機能異常が筋疾患を引き起こすメカニズムを検討するとともに、新規治療薬候補化合物の探索、開発を行っています。
2型リアノジン受容体(RyR2)を介するCa2+動態異常により、不整脈を始め、さまざまな心疾患が起こります。私たちは個体、細胞、分子レベルの様々な手法により、それらの疾患の成り立ちを研究し、さらに、RyR2を標的とした新しい不整脈治療薬の開発に取組んでいます。
創薬の代表的ターゲットであるGPCR同士が複合体を形成し、相互作用することで単独の場合とは異なるシグナル伝達を行うことが示唆され、注目されています。私たちは主としてライブセルイメージング技術を用い、異種のGPCR間の複合体形成と相互作用がもたらす神経機能の制御について研究を進めています。
神経変性疾患に伴うシナプス機能異常の実態解明を目指し、シナプス分子のダイナミクスを高い時空間解像度で可視化解析しています。
げっ歯類の胎児や新生仔から調整した脳切片は、十分な酸素と栄養を供給することで、数か月生かし続けることができるため、数週間におよぶ長期の現象を刻々と観察することが可能です。我々は、神経伝達の可塑的な変化や神経変性疾患の発症を脳組織培養下で再現し、分子メカニズムの解明を目指しています。
骨格筋は身体運動の形成や身体防御を担う「しなやかさ」な器官です。私たちは筋粘弾性の計測や筋構造イメージングにより、微小管などの細胞内構造やRyR1による収縮制御と「しなやかさ」との関係を調べています。これらの研究により怪我の予防、的確なトレーニング法の探索、および筋損傷の治療薬開発を目指しています。
神経細胞は、軸索輸送と呼ばれる細胞内輸送を用い、軸索の先端で受容したシグナルを細胞体や樹状突起まで伝える特殊な情報伝搬機構を有しています。細胞体と軸索を分離する特殊な培養法を用い、この機構の神経回路の形成における役割やアルツハイマー病など神経変性疾患発症への関与について研究しています。
FALIは蛍光標識抗体を用い、光照射により任意の時間・部位で内在性蛋白質を不活性化する技術です。組換え抗体ライブラリーを用いてFALIを行い細胞機能を変化させる抗体クローンを選択することにより、機能分子の同定を試みています。